介護現場に潜む死亡事故のリスクとは?プロでも防げない事故の原因と課題について
介護のプロが勤める特別養護老人ホームに入所すると、利用者の事故などは余程のことがない限り発生しないと思っている人が多くいます。しかし2017年度の統計では、特別養護老人ホームと老人保健施設をあわせて死亡事故は1,500件を超えているのが現実です。今回は介護現場で起きている事故とその実態について解説します。
介護現場で多い事故の種類と原因
介護の現場で起こる事故のなかで、最も多いものが転倒・転落と言われています。その割合は全国的にみても7~8割を占めるほど。転倒・転落が起きてしまう状況としては、以下のようなものが挙げられます。
- ベッドから床への転落
- 車椅子座位から床への転落
- 歩行中の転倒
- トイレでの便座に移動中の転落
これらのような転倒・転落事故の多くは、認知症がひとつの要因として挙げられます。たとえば下肢筋力低下があり車椅子生活にも関わらず、認知症により自分の身体状態のことを理解できないまま、無理に歩こうとし転倒・転落してしまう場合などです。
転倒・転落が多発する場所としては、自室やトイレが主。プライベート空間であるために、スタッフが常に傍で見守りをするわけにもいきません。いくらスタッフが努力をしたとしても防ぐことができない転倒・転落事故があることも理解しておきましょう。
転倒・転落の場合、頭部を打つことによって死亡にいたるケースもあります。特に高齢者となると、軽く打っただけでも深刻な状況になりうるのです。
介護事故を防ぐ各施設での取組み
介護施設が取組んでいるリスクマネジメントや取組みについて、先ほどの1~4それぞれを例にご説明します。
1.ベッドから床への転落
介護保険施設であるなら、ベッドの周囲を柵で囲むことは身体拘束に該当するためできません。対応策として、身体がベッドから離れた瞬間にセンサーが反応してスタッフに知らせてくれる「センサーマット」の活用が考えられます。またベッドの高さを低くしたり、床にクッション材のマットを敷いて衝撃を吸収したりといった方法もあるでしょう。
2.車椅子座位から床への転落
適切な座位保持がなにより大切です。そのためには多種多様なクッションを活用して、座位が安定できるようにします。この場合も身体拘束にならないように、紐で縛ったりすることには注意を払わなければなりません。なかには、前方に滑り落ちないための工夫がされているクッションもあります。
3.歩行中の転倒
第一の対策は、障害物の解消です。特に電源コードは足を引っ掛けやすいため、気を付ける必要があるでしょう。仮に転倒したとしても大事故にならないよう、壁にクッション材などを使用して衝撃を吸収する方法もあります。
4.トイレでの便座に移動中の転落
手すりの設置は当然のことですが、その手すりが個々の利用者(高齢者)に適切に設置されているか確認をします。たとえば左片麻痺の方に対し、左側のみに手すりが設置されていては意味がありません。
事故となる判断は実際に難しい
介護施設は現在、事故に関して非常にシビアになっています。リスクマネジメントを行い、発生後は適切に対応しなければ訴訟などへと展開する場合もあるためです。被保険者(自治体)も介護施設の事故についてはいつも目を光らせており、その都度報告を求めています。
ただし事故と一言にいっても、どこからどこまでが事故なのかはそれぞれの施設によって判断が異なるケースもあります。転倒・転落をスタッフが目撃し、その後病院を受診した場合は事故という扱いになるでしょう。しかし入浴介助の際、衣類を脱いだときに皮膚の傷を見つけたという場合、事故扱いにするかどうかは意見が分かれることもあります。
いずれもしても身元引受人や契約者への報告は必要となりますが、事故扱いにする基準は施設によって異なるのが現状です。
まとめ
介護のプロに任せたとしても、どうしても防げない事故は存在します。もちろん施設側でも事故を発生させないための努力はしていますが、業界全体の人材不足などの影響から、人員基準を守ったとしても大きな課題として今後も残っていくでしょう。介護施設に依頼する場合は、安心・安全を100%保障してくれるわけではないことを頭に入れておく必要があります。
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